その手に触れたくて

疑いたくなんてないけど、本当に隼人が家に居るのかが不安だった。

元はと言えば、今日はあたしが我が儘(わがまま)を言って隼人と一緒にいた日。


その原因は隼人が喧嘩しに行っちゃうんじゃないかって思ってたから。

だから帰って来て数時間経ってもあたしは眠りにつく事は出来なかった。


何回も何回も時計を見ては目を閉じる。

だけどなかなか睡魔に襲われる事なくあたしの目は一向に閉じる事はなかった。


刻々と時間は過ぎ、携帯に画面には03:10。の文字が映し出される。


頭の中で隼人ばかりが浮かんで…

そう思っていたあたしはいつの間にか隼人に電話を掛けていた。


ちょっとでいいから隼人の声が聞きたい…


呼び出しのコールが耳に響く。

数回のコールが鳴った後、


「…美月?」


と、隼人の擦れた眠そうな声が耳に届いた。


「ごめんね。寝てた?」

「眠りに入った所。どした?」

「ううん…」

「寝れねぇのか?」

「…うん。けど隼人の声、聞いたから寝れそう。ごめんね。起こして」

「いや…。あー…やっぱ明日起こさなくていいぞ」


眠い所為か、隼人の声のトーンが落ちていく。


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