その手に触れたくて

「えっ？何で？」

「もぅ遅いし、美月もゆっくり寝ろよ」

「あたしは別にいいよ」

「いや、俺がよくねぇ…」


申し訳なさそうな隼人の声が電話口から漏れてくる。


「でも大丈夫？」

「あぁ。明日終わったら電話する」

「うん」

「寝れるか？」

「うん。だって隼人の声聞いたから」


そう言うと隼人の微かに笑う声があたしの耳に伝わった。


「俺も。じゃあ、また明日な」

「うん。おやすみ」

「はいよ。おやすみ」


電話を切った後、あたしは暫く画面を見つめていた。

隼人と電話をしているのがまるで嘘みたいで…。でもこうやって話していると思えば、あぁ現実なんだなって改めて思うから幸せと感じる。

でもそんな幸せのひと時を実感してられるのもほんのわずかだったなんて、あたしは全く気づく予知すらもなかったんだ…