その手に触れたくて
ホントにお兄ちゃんは夜行性と言うんだろうか…、あまり寝ている所を見た事がない。
だからすごい関心してしまう。
椅子から立ち上がったお兄ちゃんはタバコを灰皿に押しつぶし、あたしに視線を送る。
水を口に含みながらお兄ちゃんの視線に気づいたあたしは小さく首を傾げた。
「早く帰れよ」
そう言ったお兄ちゃんはテーブルにあったキーケースを握りしめて、そそくさとリビングを出て行く。
そのお兄ちゃんに言われた言葉に思わずため息をつくと、カウンターキッチンから顔を覗かせていたママがクスクスと笑みを零した。
ママの方を見るとママはサンドイッチを作りながら口を開いた。
「何?さっきのため息は?」
そう言いながら、またママはクスクス笑う。
「いや…。別にって言うか、お兄ちゃんってお父さんみたいだよね?なんか、過保護にされてるみたい」
あたしはもう一度、小さくため息をつく。
「まぁねぇ…。お父さんの血をひいてるから仕方ないわよ。いいじゃない…心配してくれてる人が多いほど人間幸せなんだよ?」
「そうかなぁ…」
「そうよ。それだけ関心して見てるって事だから。…はいサンド食べてね」
ママはそう言いながらカウンターキッチンから手を伸ばし、白いお皿に並べてあるママ自家製のサンドをあたしに差しだした。