その手に触れたくて
画面には“夏美”と言う文字がくっきりと映し出されていた。
夏美の名前を見て、何故か嫌な予感がした。
何日か前、颯ちゃんちを勝手に飛び出して、夏美には何も言ってないままだった。
隼人の事で夢中になってて夏美の存在を忘れていた自分がいた。
もしかして怒ってる?
未だになり続けている携帯の通話ボタンをすぐさま押し、あたしは耳に押しあてた。
「…夏美?」
「おっはよーん。起きてた?」
「うん、起きてたよ。おはよ」
「なんか暇すぎて疲れる。美月、暇だったら颯ちゃんち行かない?」
突然出て行った事を忘れてるのか気にしてないのか、分からないけど夏美は何も口にする事なく話してきた。
「あー…」
隼人との約束を思い出したあたしは思わず、小さく語尾を伸ばした。
「えっ、何か予定あった?」
夏美はあたしの呟きにすぐさま返事を返す。
隼人と…なんて何故か言いずらい。
よくよく考えて見れば、あたしと隼人が付き合ってるのはまだ誰も知らない。
もしかすると隼人が言ってるかも知れないけど…