その手に触れたくて

「えっ、いいの?」

「あぁ。帰る時、購買が目に入って寄ってみたら、あったから」

「嬉し〜ありがとう」

「本当に好きなんだな」


そう言って隼人は呆れた様に鼻でフッと笑った。


「けど何か多くない?」


袋の中のメロンパンを見ながらあたしは隼人に言う。

中に入っているのは、ほんのり甘い匂いを漂わせたメロンパンが4つも入っていた。


「残ってるやつ全部買った」

「えっ?!全部買ったの?」

「あぁ」


思わずあたしは声に出して笑う。

そんなあたしに隼人は、


「何だ?」


と言って視線を向け、あたしは素早く首を振った。


「ありがとう。さっそく食べてい?」

「あぁ」


メロンパンが大好きと言っていた事を覚えてくれていた隼人が凄く嬉しかった。

しかもこんなに…

何かあたしの為にって思う事だけに幸せを感じてしまう。


1個のメロンパンの袋を開け、あたしはかぶりつく。

メロンパンの甘味と匂いが口の中で広がり、あたしの顔には笑みが漏れた。


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