その手に触れたくて
先輩の左手は右腕に乗っかり、右手は口元へと向かう。
眉間にシワを寄せたまま口から白い煙を吐き出してくる。
その煙でむせ返りそうになった…
隼人と同じ煙なのに何故かむせ返りそうになった。
要するにあたしの胸が苦しい。
「あんたさ、隼人と付き合ってるって本当?」
そう先輩が口を開いたのは暫く経ってからだった。
何も言葉を発しないまま俯くあたしに、
「ねぇ、聞いてんだけど…」
先輩の苛立った声があたしの耳に降り注いだ。
先輩の顔を見なくたって分かる。声からして分かる。
相当に苛立ってる。
このまま無言を付きとうそうかとも思った。
でも、さっさとこの場を離れたいのと、あたしの答えは決まってる訳で――…
「…はい」
小さく言葉を吐き出したとともに隼人の鞄とあたしの鞄にギュッと力を込め握り締めた。
俯いているあたしの視界に先輩の足が見え、先輩は一歩前へと歩み寄る。
その所為であたしと先輩の距離はカナリ縮まり、先輩の威圧感にゾッとした。