その手に触れたくて

「美月、美味しい?」


ニコッと微笑んでくる夏美にあたしはコクンと頷く。


「美月ちゃん、そんなにメロンパンが好きなの?だったら俺が全部購入しようか?」


何気なく言ってきた直司を見た途端、今まで雑誌を見ていた颯ちゃんがクスクス笑いだした。


「直司の場合、本当にやりそうだからな」

「そうそう。眼力でパクんだよ」

「“殺すぞ”ってな」


ケラケラ笑いながら颯ちゃんと敦っちゃんが話す中、フッと鼻で笑う隼人の声が微かに聞こえた。


「脅しだろうが」


そう言ってくる隼人に、「脅さねぇし、パクらねぇよ」と不機嫌な直司の声が漏れる。


「まぁ、直司は眼力パワーでぶっつぶすからねぇ…」


何気なく言ってきた夏美に笑う事も出来なかった。

確かに直司って人は見かけは怖いし、無口で一匹狼だと思ってた。

でも見かけによらず、この中で一番話してるし…


暫く経った後、校舎にチャイムが鳴り響き、颯ちゃんと敦っちゃんは、そそくさと屋上を出て行った。



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