その手に触れたくて

スクール鞄の中から財布を取り出す。


とりあえず買いに行かなくちゃ…


そう思い何気なく財布を開けた時、思わず絶望的に近い声が口から漏れていた。

「うそっ…。え、何で?」


自分に問い掛けるような声は哀れなものだった。

お札を見ても千円すら入っていない。と言うよりも小銭にすら入ってない。

手で探ってチャラチャラ音を立てるのは100円3枚と10円が数枚。


絆創膏っていくらだっけ?300円で買えるのかな?でも塗り薬も買いたい。

だから絶対に今の金額じゃ買えない。


不幸の連続ってこう言う事の事を言うんだろうか。

2度ある事は3度あるって、きっとこの事を言うのだろうか。


運がついてない事にまたイライラが積もってくる。

隠し金なんてある訳がない。バイトをしていないあたしには金すらなくて、ママから小遣いとして少しだけ貰う。

無くなったらママに頼んでまた少し貰う程度。


でも今はその肝心なママさえも居ない。ママが帰ってくるまで待てばいいんだけど、それさえも待てない自分がいて、気付けばあたしはリビングに足を踏み入れていた。


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