その手に触れたくて

「千円でいいんだけど」

「万札とそれしかねぇ」


お兄ちゃんは手に持っていた財布をテーブルに置くと、その横にあったタバコの箱を掴んだ。


「いいの?」

「あぁ」


そう言ったお兄ちゃんは箱からタバコを抜き取り、ライターで火を点ける。


「ありがと」


お礼を言ったあたしはすぐに家を出て、近くのスーパーまで歩いて行った。

速効向かう場所はスーパーの中にある小さな薬局。


火傷に効きそうな薬と絆創膏を買いその後すぐにジュース売り場へと向かった。

別にジュースが飲みたい訳じゃないし、ジュースが目的でスーパーに来たんじゃない。

でもジュースが飲みたいと言ってお兄ちゃんにお金を貰った限り、買わないといけない気がした。

アイスレモンティーを手に取ったついでにお菓子売り場でポテチも買った。


店を出てすぐお店の隅っこに腰を降ろし、さっき買ったばかりの薬を手首に塗り、絆創膏を貼った。


またまたその手首を見て、どうしようもないため息が口から漏れる。

当たり前だけど…、当たり前だけどこの傷痕はきっと残る。

そう思うとまた涙が零れ落ちそうになった。


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