その手に触れたくて
「あー…携帯2階。で、どうしたの?」
『ちょっと仕事が長引きそうだからご飯先に食べててね。作るの面倒だったら買ってきてもいいし。あ、響の分はいらないから。どうせ遅いから』
「お兄ちゃん、居るよ?」
そう言ったあたしはお兄ちゃんに視線を送る。そのあたしの視線に気付いたのか、お兄ちゃんはこっちに振り向いた。
「え、何?お袋?」
そう言ってきたお兄ちゃんにあたしはコクンと頷く。
『えっ、響もう帰ってるの?』
「うん。だけどまた出掛けるってさ」
『そう。じゃあ2人で何か食べてて。ママの分はいらないから』
「うん、分かった」
『あ、後、洗濯入れといて』
「うん」
電話を切った後、リビングにある窓を開けそこからあたしは干してある洗濯を取り入れた。
「お袋、何だって?」
「遅くなるからご飯食べといてってさ」
取り入れた洗濯を畳ながらあたしは言う。
「ふーん…」
「お兄ちゃん、ご飯どうする?」
「いらね。もうすぐ出るし」
「ふーん…そう」
小さく呟き、あたしは壁に掛けてある時計に視線を送る。
全然気にしていなかったけど、時間はすでに18時半を回っていた。
お兄ちゃんが要らないのなら作るのなんて面倒さい。まぁ、初めっから作る気なんてないけど…
だからと言ってまた外に出て買いに行くのも面倒だ。