その手に触れたくて

「…おい」


膝に顔を埋めていると、トン…と何かが頭に当たりゆっくりと顔を上げた。

そこにはさっき出て行ったはずのお兄ちゃんが居て、手に持っているビニール袋をあたしに差し出す。


「えっ、どうしたの?何?」

「飯」


差し出されたビニール袋に視線を向けると、そこからほのかに香るご飯の匂いがした。


「え、何で?」

「何でって、どーせお前食わねぇつもりだったろ?」

「うん」


コクンと頷くあたしに、


「やっぱりな」


と、分かり切ったような言葉を吐き捨て、お兄ちゃんはビニール袋をテーブルに置いた。


置かれた袋をガサガサと探り、お弁当を取り出し中身を見る。

開けた途端ハンバーグの匂いが鼻の奥まで染み込んだ。


「ありがと」

「あぁ。つーかお前、手どした?」

「…え?」


不意に聞かれた言葉に一瞬、手が止まった。

お兄ちゃんが見つめている先は当たり前にあたしの手首で、何故か聞かれると嫌な汗が背中を伝った。


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