その手に触れたくて
「あー…うん。大丈夫だよ。ごめんね」
そう言うしかなかった。
「いや…謝んなくていいけどよ、すげぇなんかしんどそうだったから大丈夫かな…と」
「うん全然大丈夫。心配かけてごめん」
「いや…」
「隼人、今何してんの?」
さっきからずっと気になってたけど、通話口から聞こえるのはエンジンを吹かしている音。
何処か行くのかな?
「あー…今から直司んちに行く」
「直司?」
「あぁ。俺の原付調子悪くて直司に借りてたけど返せっていいやがったから返しに行く」
ダルそうに言う隼人にあたしは思わずクスクス笑った。
「そっか」
「ダリィけど、いっちょ行ってくっか」
「うん、頑張れ」
「あぁ」
電話を切った後、あたしは眠りに堕ちていた。
次の日の学校もその次の日の学校もあたしは平凡な日々を毎日送ってた。
送ってたんだけど、でも…、あたしのちょっとしたミスで…ミスで…張り詰めた空気が流れるなんて、あたしは何も考えてもいなかった。