その手に触れたくて
「あ、隼人ライター落ちたよ」
「あっ、わりぃ」
拾おうとするあたしの手の上に隼人の手が重なる。
ライターを掴んで拾い上げた手は隼人に握られたままで…、その握られている手に少しずつ隼人の力が加わっていくのが分かり、
「…何これ?」
隼人の低い低い小さな声であたしの視線は隼人に向いていた。
「え?何が?」
未だに握られている手を不思議に思ったあたしは隼人を見て首を傾げる。
隼人の視線は一直線にあたしの手首に落ちていて、その方向に目を向けた時、あたしの身体に嫌な汗が走ってた。
隼人に握られている手首。ライターを拾う時にシャツが少し上にあがってて、その位置で隼人はあたしの手首を掴んだから、そこから微かに見えているのは跡。
そう、あの時、先輩からつけられた跡が見えてた。
あたしは思わず咄嗟にライターを持ったまま自分の手を引く。
だけど一旦離れた隼人の手はすぐにあたしの手へと戻り、そして少しだけあたしのシャツを捲る。
じっと見つめていく隼人の顔が曇っていくのが分かる。
「…美月?何これ…?」
そうもう一度問い掛けられたあたしは何故か言葉を失い口を開く事も出来なかった。