その手に触れたくて

「…何も隠してないよ?」


全然説得力がないあたしの言葉に隼人はあたしの肩から手を離し、


「もういい」


そう低く呟き、立ち上がった。


「…隼…人?」


立ち上がった隼人を見て隼人の名前を呼ぶあたしに、隼人は何も言わずにこの場から離れ足を進めて行く。

その歩き方と言うか隼人と自身その姿が不機嫌まっしぐらに見えてしまって、あたしは慌てて立ち上がった。

食べかけのメロンパンを袋の中に入れ、あたしは隼人の背中を追い掛ける。


「ねぇ、隼人!!」


両手をポケットに突っ込んでいる隼人の手を掴んであたしは声を張り上げた。

だけど隼人は一瞬たりともあたしの方なんか見てなくて、その隼人の顔はあたしが今まで見た事もないくらいに怒ってた。


だけど、あたしには隼人が怒っている意味が分からなかった。

ただあたしが解釈したのは、あたしが隼人に何も言わないから怒ってるんだと思った。


あたしが隼人を怒らせている…


< 229 / 610 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop