その手に触れたくて

階段を下り2階に辿り着くと隼人はクルっと後ろを振り向きあたしを見る。


「教科書持って来っから」


そう言ってきた隼人にコクンと頷き教室に入って行く隼人を目で追った。


「教科書で思い出したけど夏美、俺に貸して」


夏美の前を歩く直司はそう言って、E組の前まで来ると直司は壁に背を付けた。


「あー、いいよ」


夏美が教室に入ったのと交代に隼人は一冊の教科書を持ってきてあたしに差し出した。


「悪ぃな」

「ううん」


軽く首を振って渡された教科書を受け取った時、反対側の手に持っているパンに目が入った。

購買に行った時、メロンパンがなくて夏美に貰ったクリームパン。

隼人のメロンパン勝手に奪って、隼人は何も食べてないんじゃ…


そう思ったあたしは、


「食べる?」


隼人に目を向け、手に持っているクリームパンを目の高さまで上げてブラつかせた。


でも隼人は「いや、いらね」そう言って首を振った。


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