その手に触れたくて
「ちょっと待って隼人!!」
「……」
隼人の歩くスペースがあまりにも早くて、あたしは駆け足になる。
隼人の腕を離さないようにと強く掴んであたしは隼人に問い掛ける。
でも隼人は言葉一つ口に出さずに歩いて行く。
「ねぇ、隼人どうしたの?ごめ――…」
「美月ちゃん、どした?」
あたしの言葉を遮ったのは、すれ違いさまに聞こえてきた直司の声で、足が縺れそうになりながらも後ろを振り返ったあたしに直司は訳が分からず首を傾げている。
そんな直司から目を逸らし隼人に目を向ける。それと同時に隼人は足を止めた。
ピタッと隼人が足を止めたのは教室の前。あたしでも…隼人でもない教室。
ゆっくり視線を上げてクラスのプレートを見た時、嫌な予感がした。
「…香奈!!」
そう叫んだのは隼人で、その相沢さんの名前を聞いた途端、どうしようもない感情に包まれた。
「何?」
そう言って教室から出て来た相沢さんは、隼人の表情を見てすぐ顔色を曇らす。
隼人からあたしに目を向けてきた相沢さんは、目を泳がすあたしを見て察知したのか隼人を一切見る事は無かった。