その手に触れたくて
「ごめんね。美月ちゃん…」
「あ、いえ」
「ゆっくりして行ってね」
「はい。ありがとうございます」
そう言っておばさんは靴を履いて玄関を出た。
何回か隼人のお母さんに出会ったけど、いつみても隼人のお母さんは優しいと言うか、のほほんとしている。
学校に行かなくても全然怒らないし、何だかその自由気ままさが何となく羨ましい。
別にあたしのお母さんが厳しいとか怖いとかじゃないんだけど。まぁあたしの場合はお父さんが厳しかったから羨ましいと思うのかもしれない。
まぁ今は煩いお兄ちゃんが居るけど…
部屋に入って腰を降ろしてすぐ隼人はペットボトルとグラスを持って来た。
「これしかねぇけど、いい?」
そう言って隼人は持ってきた麦茶をテーブルに置く。
「うん。ありがと」
隼人はあたしの左側に腰を下ろし、さっき持って来た麦茶をコップに注いだ。