その手に触れたくて

「もともと隼人はあの人の事、好きじゃなかったって」

「え、何?どう言う事?」

「あたしは知らなかったんだけどさ、あの女と隼人は4年前くらいから知り会ってたんだって」

「4年前って隼人が中1の時?」


あたしの問い掛けに夏美は少しだけカフェオレを口に含んでコクンと頷く。


「隼人がよく行くコンビニにあの女がいつも居たんだって。そこでね、よく手首切ってたって…」

「え、何それ…」


ポツンと呟いたあたしの声は自分でも思うほど低かった。


「理由はよく知んないけど、それが落ち着くみたいな事言ってたんだって。で、それを何回か見た隼人が助けたって訳」

「……」

「まぁ、それがきっかけで隼人の事好きになったみたい。隼人は好きとかじゃないけど、あの女ワガママだからただ付き合ってただけらしい」


そう言えば、先輩と隼人が話してた時、そんな事言ってたっけ?

俺とお前はもともとそう言う関係じゃないとか…なんかそのような事を言ってたっけ?

その時は全然意味が分かんないまま終わってたけど、やっとその意味が分かった気がした。


でも、なんで…


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