その手に触れたくて

それから隼人が学校に現れたのは2日後だった。


その日まで全く隼人の携帯に掛けても隼人が出る事すら掛かってくる事もなかった。

隼人が学校に来たのは丁度昼休みで、夏美の教室に向かう途中、あたしの視界に入ったのは教室の壁に背を付けた隼人で、その前には直司が居た。


「…隼人?」


不意に出たあたしの小さな声。

会いたくて会いたくて、どうしようもないくらい会いたかった隼人が、今あたしの目の前にいる。

少しずつ少しずつ足を隼人に近付けて行く途中――…


「…美月」


ゆっくりと振り向いた隼人の口がそう動いた。

だけどあたしの足は隼人の顔を見て全く動く事なく、その場に止まった。


それは隼人の口元が少し腫れていたからだった。少し距離が開いているこの場所からでも隼人の顔色とか表情は分かる。

あたしに気付いた隼人はゆっくり足を進め、あたしに近づいてくる。


隼人…何その顔。この2日間、何してたの?


あたし寂しかったんだから…隼人の事ずっと待ってたんだから…


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