その手に触れたくて
Γは?意味わかんない」
そう言った夏美はあたしから隼人に視線を向ける。
夏美が視線を向けた瞬間、すぐに分かった。
背後から隼人の深い深いため息が聞こえたのを…
Γ隼人…あんた何してたの?」
Γちょ、夏美…もういいって」
納得がいかないのか夏美は隼人に問い掛ける。だけど、それを止めようと、あたしは夏美の腕を軽く揺する。
でも夏美は――…
Γは?言い訳ないじゃん。ずっと心配してたくせに」
Γ……」
そう言ってきた夏美に間違いはない。だから夏美に何も返せなくなったあたしはゆっくりと視線を隼人に向けた後、俯いた。
Γちょっとは美月の事も考えなよ!!何してたのかは知んないけど、電話くらいしなよ。この前といい今回といい、どーなってんのよ」
夏美は言いだしたら止まらない。そのはっきりした口調とサバサバしてる性格はあたしには無いもので、凄く羨ましい。
あたしには言えない事を変わりに言ってくれる夏美が羨ましい。
でも、これ以上言って隼人を怒らせたくないあたしは、夏美の制服を摘まんで“もういいよ…”と心の中で呟きながら軽く何回か引っ張った。
だけど――…
そんなあたしの手が一瞬にしてピタッと止まった。