その手に触れたくて
Γなら問題ねぇだろ」
Γいや、でも…」
Γそんな心配だったら夏美に持って帰ってもらっとけ。つーか美月、そんなに俺と居るのが嫌なのかよ」
そう言われた途端、素早くあたしは首を左右に振った。
Γ…なわけないじゃん。隼人と居たい」
Γ俺も」
薄ら笑う隼人の顔はさっきまでの悲しそうな瞳じゃなくて、いつも通りの隼人の顔になってた。
でも隼人の顔に出来ているアザの理由が気になったけれど、あたしは敢えてそれには触れなかった。
学校を出てあてもなく隼人と駅前通りをブラブラと歩いた。
隼人の手に触れてるだけで一緒にいる実感が身に染みてそれだけであたしは幸せを感じてた。
特に大きな幸せなんてあたしは要らない。隼人と一緒にいるだけであたしは幸せだったのに――…
辺りが真っ暗に染め始めた頃、あたしと隼人は隼人の家へと向かった。
別に特に何をする訳でも無いけれど雑誌を見たり他愛ない会話をしたりしてた。
だけど、隼人のたった一言であたしの心は大きく混乱し始めた。