その手に触れたくて

Γ一応の確認なんていらないし」

Γ念のため」

Γ何それ…」


この時は隼人の言ってた意味も理解も全く分かんなかった。

それからの日々は本当に穏やかで、隼人と毎日一緒に居て平凡な日々を送ってた。


だけど冬に突入した12月…それはあたしにとって最悪最低な出来事だった。

それなりに平凡な日々を送ってたのに、隼人の様子がだんだんとおかしくなり始めてた。

あたしには何もない様に見せ掛けて、笑顔も優しさも全部降り注いでくれていた。

だけど、ふとした瞬間、隼人はどうしようもないくらいに疲れた顔をする。

時には何度も何度も深いため息を吐き捨てる。学校にも何日か来ない日だって増えていた。

問い掛けるあたしに、風邪だとか寝すぎたとか言ってくる隼人を信じようとした。

だけど、それを信じようとしても信じられない隼人の行動をあたしは疑ってた。

久し振りに来る隼人の顔にアザが出来てたり、薄れかけているって言うのか治りかけの傷跡が顔に出来てた時が多数あった。

でもあたしはそれを見てみぬふりをしてた。なんとなく“それ”に触れてほしくない隼人に分かったから。


だけど、その事実を知ったのは、またあたしの犯した行動からだった――…


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