その手に触れたくて

放課後になると、すぐに夏美はあたしの教室まで来て蔓延の笑みを見せた。


「本当、ラッキーだよね」


夏美は嬉しそうに言う。


「でもいいのかな…。あたしお金持ってないし」


表情を少し曇らせると「あたしだって金ないよー」と上機嫌に応え、話を続けた。


「隼人がいいんじゃね?って言ってんだから着いて行かないと損だよ」

「損って…」


5時間目の休み時間、夏美に何処行くのか聞くと"焼き肉食べに行こ"って言われた。


皆が焼き肉を食べに行くらしくって 、夏美はその話に乗ったのだ。

どうやら夏美にしたら行かなきゃ勿体ないらしい…


5時間目の授業中、隼人が颯ちゃんと電話しているのを夏美は盗み聞きしたらしい。

案の定、隼人は怒られてたって言って夏美はケラケラ笑ってたけど。


それを聞いて何となく思った。

夏美が言ってた"隼人が居ると授業中怒られないんだ"って事を…


「ねぇ、颯ちゃんちに行こうよ」


靴に履きかえて昇降口を出てすぐ夏美は言ってきた。


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