その手に触れたくて
Γあれ?心配して戻ってきたの?けどよ、もうこいつアンタを守る気力もねぇよ」
そう言った男は笑いながら隼人の太股を蹴りつけた。
Γ止めてよ!!」
あたしは隼人を庇おうと隼人の身体に覆い被さる。その隼人の顔に触れた時、ヌルッとした生温いような感触が手についた。
それが見なくても何となく分かった。隼人の血だって事を…
Γつーかよ、アンタ邪魔なんだよな。そこ退(ど)けよ」
Γなんなら俺が相手してやろうか?」
そう言った男の一人の手があたしに伸びてきて、あたしの腕をがっしりと掴んだ時、
Γそいつに触れんじゃねぇよ」
低いお兄ちゃんの声が背後から聞こえた。そのお兄ちゃんの声に、あたしの腕を掴んでいた男は小さく舌打ちをする。
Γ…んだよ」
苛立った声を吐き捨てた男が振り返った瞬間、
Γやべぇよ…」
そう誰かの小さな声が密かに聞こえた。
何がヤバイのか、何があったのか分からないまま隼人にしがみついていると、さっきまで掴んでいたあたしの腕を男は簡単にスッと振り放す。
と、同時に周りにいた男達と一斉に走りだした。
この状況をいまいち把握できないあたしは、お兄ちゃんに視線を向ける。お兄ちゃんは不機嫌な顔をしながら走って行った男達に視線を送ってた。