その手に触れたくて
Γなぁ悠真…アイツらの顔知ってるか?」
そう低く呟いたお兄ちゃんは未だに男達の方へと視線を送ってた。
Γいや、分かんね」
お兄ちゃんの隣に居る悠真さんはそう呟き、その隣にいた凛さんが勢いよくあたしの方へと駆け付けた。
Γえっ、ちょ、だ、大丈夫?!」
あたしが隼人から身体を離すと、凛さんは勢いよく声を上げた。
隼人はグッタリしてて時々激しく咳込む。気温が落ちて寒い所為でもあるのか、隼人の身体は震えてた。
Γ隼人…隼人…。ねぇ、隼人!!」
溢れる涙を堪えながらあたしは必死で隼人の名前を呼んだ。
だけど隼人は声を出すのも辛いのか、あたしの問い掛けに応える事はなかった。
Γねぇ、響!!」
凛さんがお兄ちゃんに声を掛けると、お兄ちゃんは視線をあたし達の方へと向け、足を進ませる。
そしてあたしの真ん前まで来て腰を下ろすと同時に、一瞬にしてお兄ちゃんの顔色が変わったのが分かった。
なんとなくその表情がよくない事が、分かった。長年一緒に居るお兄ちゃんの顔色がとてつもなく嫌な予感を引き寄せるものだって分かった途端、無意識の内にあたしは隼人にしがみついてた。