その手に触れたくて

だけど隼人に覆い被さるあたしの身体を、お兄ちゃんは押し退け隼人の顔をマジマジと見たお兄ちゃんは小さく呟いた。


Γおい、コイツとどう言う関係だ」

Γ……」


低く低く呟いたお兄ちゃんは眉間に深くシワを寄せ、あたしに視線を移す。

そのお兄ちゃんが何故だかあまりにも怖くなったあたしは、ただただ黙るだけで、


Γ聞いてんのか、美月。お前に聞いてんだよ。コイツとどう言う関係か…」


だんだん苛立ったお兄ちゃんの声が頭上から降り注いだ。


Γえ、何?何なの?」


険悪な空気が漂う中、凛さんの戸惑いの声が横から入り込む。

だけど、


Γ凛は黙ってろ。今は俺とコイツが話してんだ」


そう言ったお兄ちゃんは一度、凛さんに向けていた視線を戻しあたしに向けてきた。

凛さんもお兄ちゃんの一言で黙り込んで、何が何だか、どうなってんのか分かんなかった。だけどお兄ちゃんから出た言葉に何となく言っちゃいけない気がした。


お兄ちゃんと隼人は知り合い? 混乱していくあたしに、


Γまさかお前…コイツと付き合ってんじゃねぇだろな」


いかにも隼人の事を知ってるような言葉と、付き合っちゃいけない様な言葉を、お兄ちゃんは吐き捨てた。

図星だから何も否定する事は出来なくて、ただ口を紡ぐあたしに、お兄ちゃんの小さな舌打ちが聞こえた。



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