その手に触れたくて
Γ美月ちゃん一人じゃ無理だって。響に頼めば――…」
Γいいんです!!お兄ちゃんに頼むくらいなら、あたし一人で行きます」
Γ一人で行くっても、こっから病院なんて遠いよ?」
Γだったらタクシーでも呼びます」
未だに何度もむせ返る隼人の背中を擦りながらあたしは凛さんにそう言った。
Γじゃあ、あたしも手伝うよ。…悠真も手貸しなよ」
少しの沈黙の後、凛さんは考えたのかそう言って悠真さんに視線を移す。
だけど、悠真さんもお兄ちゃんと同じく“まいったな”って顔付きをし、深く息を吐き捨てる。
Γおい、響!!お前、このまま行ったら容疑者だぞ」
Γあ?」
悠真さんの言った言葉に足を進めていたお兄ちゃんは不機嫌な声を漏らし、その場で足を止めた。
Γアイツが死んだらお前、容疑者だからな」
縁起でもない事を言う悠真さんに、立ち止まったお兄ちゃんは振り返る。
Γ何で俺が容疑者扱いされなきゃなんねぇんだよ。そいつに指1本も触れてねぇし」
Γ触れてなくても放置したにはかわりないから容疑者だからな」
Γ知らねぇよ」
お兄ちゃんは何が何でも隼人を放置したいらしく、あたしが不愉快になる言葉を次々に吐き捨てる。
そんなお兄ちゃんに苛立ちが立ち込めるし、ぐったりする隼人を見るとあたしの頬に何度も涙が走ってた。