その手に触れたくて

Γ泣いてる妹まで放置すんのかよ!!」


何が何でも悠真さんはお兄ちゃんを引き止めたいらしく、次々に言葉は吐き出していく。

もう、いいのに…。お兄ちゃんなんてどうでもいいのに…ほっとけばいいのに。

お兄ちゃんに対しての苛々が積もり初め、早く病院へ連れて行かなきゃ…と思ったあたしはスカートに入れた携帯を取出し――…


Γどうしよう…」


どうする事も出来ない感情から、また涙が溢れだした。

取り出したのにも関わらず、タクシーの電話番号すら分からない。ここでタクシーを待つにしてもいつ来るかも分からない…。

お兄ちゃんだって勇真さんだって凛さんだって居るのに助けを求める人は居なくて、ただただ溢れてくる涙を手で拭いながら、身を縮める隼人に寄り添う事しか出来なかった。


Γ…隼人?」


隼人の耳元に顔を近付けあたしは小さく呟く。だけど、隼人はもう声を出す気力さえなくて必死で息をしてる。


あたしが飲み物買いに行ってなんて言うから隼人がこんな目にあったんだ。…そう思うと、また自分に苛立ちが芽生えあたしは唇を噛み締めた。

ただ泣き縋って隼人に身を寄せるあたしに、


Γ連れて来い」


ポツンと呟いたお兄ちゃんの声が微かに背後から伝わった。



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