その手に触れたくて
その声に反応したあたしは頬へと伝っていく涙を手で拭いながら、お兄ちゃんに視線を向ける。
Γ早く来いよ」
そう素っ気なく返したお兄ちゃんは、あたし達に背中を向けて歩きだす。
Γちょ、響!!だったら手伝ってよ!!そこまで言ったんなら最後まで責任もちなよ!!」
凛さんが声を上げるとお兄ちゃんは足を止め、面倒くさそうにため息を吐き捨てる。
Γ悠真…手貸してくれ」
Γあぁ」
そう言ったお兄ちゃんと悠真さんは隼人の所まで来て2人で隼人を抱き抱える。
足を進めて行くお兄ちゃん達に抱き抱えられた隼人はグッタリして、その足すら前に進んでいない。
まるで引きずられているような感覚だった。
Γ美月ちゃんも早く」
呆然と立ち尽くして隼人を見ていると、隣にいた凛さんはあたしの肩を揺らしながらそう言った。
Γあ、うん…」
凛さんに腕を掴まれ、あたしはお兄ちゃん達の後を追った。
車に着くと、丁度、隼人を後部座席に乗せた所で、そのグッタリとしている隼人を挟んで、あたしと凛さんは座った。
意識が朦朧としてるのか、隼人は目を開ける事なく深く身体を車のシートに預ける。
その冷たくなった隼人の手を、あたしはそっと握り締めた。