その手に触れたくて

Γ…あ、え?」


小さく反応してゆっくりと凛さんを見つめると、凛さんは奥の通路を指差した。


Γ手、洗いに行こう」


そう言われて自分の手元に視線を送ると、あたしの手が真っ赤に染まってた。


…隼人の血だ。


今の今まで気付かなかったけど、あたしの手が真っ赤になるほど隼人は血を出していた。

制服にも視線を移すと、所々に隼人の血が飛び散っていた。


Γ行こっか」


そう言われて凛さんに手を引かれながら、お兄ちゃんの前を通り過ぎると、お兄ちゃんの口から深いため息が漏れたのが聞こえた。

相当にお兄ちゃんは隼人の事を嫌ってる――…


そう解釈する事しかあたしには浮かばなかった。



トイレに行って手を洗うと、隼人の血がどんどん落ちて流れていくのが分かった。

その血にまた意識がぶっ飛びそうになる。


隼人…大丈夫かな?
生きてんのかな?

そんな事を思ってるとまたあたしの目から涙が落ちてた。

頬へと伝う涙を手で拭いながら目の前にある鏡を見つめると、あたしの目が真っ赤になってて、それだけでどれだけ泣いたのかが一目瞭然にして分かった。



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