その手に触れたくて
線香を立て軽く瞼を閉じて両手を合わせる。
…――お父さん。高2になって1ヶ月が過ぎたよ。あたし頑張ってるから心配しないでね。また来るね――…
ゆっくり目を開けて心の中で“じゃあね…”と、もう一度呟き、あたしは自転車の所まで駆け寄った。
自転車に跨り、学校へ向かってスピードを上げる。
お父さんが亡くなったのは本当に本当に突然だった。
夜、ママと二人でリビングで何気なくテレビを見てる時だった。
一本の電話から鳴り響く着信音にママが出ると、明るかったママの声が急に震えた声に変わり、顔さえも青くなってたのを今でも覚えている。
内容は交通事故だった。信号無視をしてきたトラックとぶつかり、お父さんの乗っていた車はグシャグシャになってて即死だったらしい。
夢かと思った。
本当に夢の世界にいるんじゃないかって思った。
それからママは崩れるように毎日泣いてた。
そして、あたしも。