その手に触れたくて

「そう言えばさ、」


夏美はそこまで言って、後ろを振り返りあたしを見た。


「何?」

「美月、ママに連絡した?」

「うん。食べに行くってメールしたよ」

「そっか…」


夏美は小さく呟き、安堵の笑みを見せた。

遅くなる時とかは何故か夏美はあたしの事を心配する。

お父さんが居なくてママだけだからなのか夏美はいつも言う。

それが夏美の優しさなのかも知れない。


颯ちゃんちまで来ると、家の横にある細い道を夏美が通って行き、あたしもその後を追った。

そこを抜けると、少し広い空き地があり原付とバイクが何台か停めてあった。


そして目先には家と言うか2階建てのプレハブみたいな建物があり、そこの鉄階段を夏美は上がって行く。

その後を追うと、夏美は上がった所にあるドアを勢い良く開けた。


「やっほぉー」


少しテンションの高い明るめの夏美の声に「おぉ」って男達の重なる声が聞こえた。

夏美の後ろから中を覗くと数人の見た事もない男達がこっちを見ていた。


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