その手に触れたくて

手で拭っても拭っても目からは涙が零れ落ちて、視界がぼやけて隼人の顔さえもはっきりと分からなくなってた。


隼人の口数はものすごく少ないし、意識が朦朧としている様にただ窓に視線を向けてボーっとしている隼人は何をどう考えてるのかも分からなかった。

だからと言ってあたしの震える唇から声を出すのも困難で、気付けばあたしは隼人の病室を出てた。


話しの解決も全く終わらないままあたしは出てた。

お兄ちゃんが隼人に訳わかんない事を告げるから…。隼人が全然口開かないから…


来る途中は隼人にずっと夜まで付き添いしようと思ってたのに…なのに隼人があんな事言うから…

なんか一気に身も心もボロボロになった様な気分だった。


病院を出て行く当てもないあたしは結局家に帰ってた。家に帰ってただベッドの上で寝転んで、ただボーっとしてた。

とにかく今は何も考えたくないのに頭に浮かぶのはお兄ちゃんと隼人の事で、なんであんなに2人はピリピリしてんだろうって思う事ばかりだった。

お兄ちゃんだって隼人だって結局は遠回しに話を進めるだけで肝心な事は一切言ってくれなかった。


なんで…
なんで…
なんでなの?

そう思う中、ふと頭に浮かんだのは一人の存在で、あたしは一度起き上がり鞄の中から携帯を取り出した。


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