その手に触れたくて

取り出してすぐ着信履歴の一番上にある夏美にコールする。

暫く鳴り続けた後、プツっと途切れたコールの後、夏美の声が耳に届いた。


Γ…美月?」


やはりいつもの夏美じゃないみたいに声のトーンも少し低めだった。


Γうん。夏美…もう帰った?」

Γあ、ううん…まだ学校。今から帰る所だけど」

Γそっか…。あ、あのさぁ…相沢さんってまだ居るかな?」


そう聞くあたしに、


Γえっ?!相沢さん?!」


夏美の少し驚いた声が耳に伝わった。

そら驚くもないな…相沢を呼ぶなんて。でもあたしが今悩んでいる事を解決してくれそうなのは相沢さんしか居なかった。


Γあ、うん。ちょっと聞きたい事があるんだけど…」

Γ…なんかあった…美月?」


そう言ってきた夏美の声は心配するようなちょっと暗めの声だった。


Γうん…ちょっと…」

Γあ、えっと…ちょっと待ってね、相沢さん探して見るから」


そう言ってきた途端、夏美は走りだしたのかバタバタと足音が響いた。

夏美が走る所為でザワザワと風の雑音が電話口から漏れる。

その音がピタっと止まった時、


Γあ、相沢さん!!」


夏美の張り上げた声が響いた。


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