その手に触れたくて
店の中に入ると甘い香りが心地よく店内に広がり、その匂いが何だか心を落ち着かせてくれた。
可愛らしい木造の店内には花がいっぱい飾ってあって、いかにも女の子って感じのカフェだった。
一番端の4人掛けのテーブルにあたしは座り、あたしの前には夏美と相沢さんが腰を下ろす。
さっそく出迎えた店員に入る前から決めていた温かいロイヤルミルクティーを3つ相沢さんは注文した。
Γところで美月、制服ないって何で?」
さっそくそう聞いてきた夏美にあたしは少し視線を落とす。
Γ昨日、色々あってさ…汚れたからクリーニングに出したの」
Γあー…」
夏美は何かを感じたのか小さく呟き語尾を伸ばした。
Γで、美月ちゃん聞きたい事って?」
夏美の呟きに混じって相沢さんはあたしに問い掛けた。相沢さんは首を傾げながらあたしを見つめる。
注文したロイヤルミルクティーがテーブルに3つ置かれてすぐ、あたしは目の前にあるミルクティーを見つめながらゆっくりと口を開いた。
Γ隼人とお兄ちゃんの事で…」
Γえ、お兄ちゃん?お兄ちゃんって美月ちゃんのだよね?」
相沢さんは戸惑う様に聞き返す。あぁ…そっか。相沢さんはあたしにお兄ちゃんが居るって事、知らないんだった。
なら少し驚くのも無理ないよね…。突然来て、お兄ちゃんの事なんて言われても戸惑うのが当たり前だよね。