その手に触れたくて

Γあ、うん。あたしのお兄ちゃんだけど…」

Γって言われても…あたし美月ちゃんのお兄さんの事分かんないんだけど…」


相沢さんはちょっと困った顔をし、温かい湯気が出ているミルクティーのカップを両手で掴んだ。

その掴んだカップを相沢さんは口へと運ぶ。


Γあー…うん。だよね…。んー…何て言ったらいいのか分かんないんだけど、安藤って聞いて何か思い浮かぶ事ない?」


とりあえずあたしはワザと相沢さんに遠回しで聞いてみた。

お兄ちゃんの名前が幅広く知られているのなら相沢さんも知ってるんじゃないかって思ったあたしは探るように聞いてみた。


だけど、


Γえ?…安藤?安藤って美月ちゃんの苗字だよね?…え?誰?…え、ごめん分かんない」


相沢さんは顔を顰めたまま何度も天井を見て考える素振りをする。

そう呟いた後も首を傾げながら何度も考え込む。そんな考え込む相沢さんに、


Γ安藤…響さん」


夏美がポツリと呟いた。


Γえぇっ!!って、えぇっ!?安藤響さんって、あの響さん!?」


夏美が呟いた後、さっきとは打って変わって相沢さんは目を大きく見開き勢い良く声を上げる。

その声にビックリしてしまったあたしの身体はビクンと飛び跳ね、あたしを見つめる相沢さんの目は未だに見開いたままだった。



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