その手に触れたくて

“あの”って言われてもどの人の事を言ってるか、あたしには分かんない。

だけど今はお兄ちゃんの事を話してんだから、“あの”に、当たるのはお兄ちゃんの事なんだろうと思った。


だけど、そんなに驚く理由が分かんない。ただお兄ちゃんの名前を言っただけなのに、そこまでビックリした相沢さんに、あたしは逆に驚いた。


Γうん…“あの”か何かは分かんないけど、あたしのお兄ちゃんだけど…」

Γえっ、そうなの?美月ちゃんって響さんの妹なの?」


あたしのお兄ちゃんだと言ってるのに相沢さんは、またまたあたしに確認する。


そんな相沢さんにコクンと頷くあたしに、


Γってか、それってヤバくないの?」


訳の分からない事を相沢さんは言ってきた。目の前の相沢さんは目を泳がせながら混乱した顔を見せる。

お兄ちゃんといい、隼人といい、相沢さんといい、もう何を言ってんのかあたしには意味不明だった。


斜め前にいる夏美は何が何だか分からないまま、困った顔をした相沢さんをずっと見てた。

やっぱし相沢さんは何かを知っていた。あの怖いと言う剛くんと付き合ってただけに色んな情報を持っているんだと思った。


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