その手に触れたくて
Γで、隼人は何て?」
Γ分かんない…。隼人が何考えてんのか分かんない。…隼人、口数少ないの。あたしがお兄ちゃんの妹だって事を初めから知ってたら、あたしと付き合ってないってさ」
そう自分で言った途端、物凄く物凄く辛くて悲しくて、溢れてくる涙を無理やり押し込むしかなかった。
もう、何が何だか分かんないよ。なんでお兄ちゃんはあんな事言うの?なんで隼人はあんな悲しそうな瞳をしてたの?
分かんないよ…
Γ…何それ…」
あたしの言った言葉に夏美の低い小さな声が不意に漏れた。そんな夏美は少しイライラしてんのか、顔を顰めたまま何度も溜め息を吐き捨てていた。
Γあたしはあまり詳しくはないんだけど…」
そう呟いた相沢さんはあたしにチラッとだけ視線を向けた後、手元のカップに視線を向け話を続けた。
Γほら…剛と隼人って仲いいじゃん?だからちらほら聞いた事あったけど、知ってる事と言えば、響さんと隼人はいい感じじゃないよ」
Γやっぱり…」
Γんー…何て言うか要するに敵対心って感じかな」
Γ…敵対心?」
その言葉を聞いた途端、あたしは徐々に落としていた視線を上げ、相沢さんを見た。
相沢さんはよくない表情をし、首を傾げながら何度も頭を擦る素振りをする。