その手に触れたくて
Γアイツと居たらロクな事ねぇっつっただろ。…現に今、俺の後輩とアイツが何度かやり合ってる」
Γ……」
Γまぁ…後輩なら止めろっていくらでも言える。けどな、アイツに恨み買ってる奴は他にもいっぱい存在してる。だから身近に居るお前にまで被害がくんだよ」
Γ……」
Γそんな事も分かんねぇのかよ」
面倒くさそうに話すお兄ちゃんは深く息を吐き捨てビールを口にした。
Γ…お兄ちゃんは…隼人が嫌いなの?」
ポツンと呟いたあたしの小さな声は微かに震えていた。隼人とあたしの関係を壊そうとしているお兄ちゃんは、どうみても隼人の事を嫌ってるとしか思えなかった。
でも――…
Γ嫌いとかそう言うレベルじゃねぇ」
お兄ちゃんは低く呟いた。そう言う“レベル”って意味が分かんない。
だけど、どうしても納得がいかないあたしは、
Γ自分の身ぐらい自分で守るもん…。隼人だって守ってくれるもん…」
何故かあたしは自意識過剰気味た言葉を吐き出していた。何でそんな事、言ったのかも分からなかった。
でも気付いたらそう口が動いてて――…
案の定、あたしが呟いた事にお兄ちゃんの顔付きが一気に変わった。
何言ってんだコイツ。…と言わんばかりにタバコをくわえたまま、あたしを見上げた。