その手に触れたくて

颯ちゃんは冷蔵庫から2本のオレンジを出すと、あたしと夏美の所まで来てそれを差し出す。


「はいよ」


差し出されたオレンジをあたしと夏美は受け取った。


「ありがとう」


あたしが声を掛けると颯ちゃんは優しい笑みでニコッと笑う。


「ねぇ、ナオ達は?」


夏美の問い掛けに、あたしは部屋の中を見渡した。

だけどそこには後の3人の姿は無かった。


「直司と敦也はもうすぐ来るけど、隼人は分かんね。直接、焼肉屋に行くんじゃねぇの」

「ふーん…。でさっ、マジ払わなくていいんだよね?先に言っとくけど、あたしも美月も金ないからね!」


夏美は相当、お金を払いたくないらしく言ってる口調まで強くなり、あたしは思わず苦笑いになってしまった。

まぁ、夏美らしいと言えば夏美らしい。


「いいんじゃね?今回払うの直司だし」


そう言って颯ちゃんはクスクス笑いだす。


「何?どー言う事?また何かしたの?」

「4人の中でパチンコに負けた奴が払うってやつ」

「え、負けたのに払うの?」

「あぁ」


またまた颯ちゃんはクスクスと笑い、その直後…


…――バン…


と音をたてて勢い良くドアは開き、あたしと夏美と颯ちゃんは同時に目線をドアに向けた。



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