その手に触れたくて
ギィ…と鈍い音に視線を向けると、お兄ちゃんは椅子を引き摺って立ち上がってた。
未だに電話を耳に当てたままで、何かを話ながらあたしの横をスッと通り過ぎて行く。
その方向に視線を送ると、お兄ちゃんはリビングを出て――…
ガチャ…っと音がして玄関のドアが閉まった音が微かに聞こえた。
…って言うか、意味分かんない。今、あたしはお兄ちゃんと話してたのに。なんであたしをほっといて何も言わずに出て行くのかな…。
まだ…話し終わってないし。って言っても、もうお兄ちゃんと話す事なんてないか…話すだけ、なんか無駄だし。
…にしても、あれだけ飲んでんのに出掛けて行く事、自体分かんないし。
シン…と静まり帰ったリビングは異様な物静かさが漂っていて、壁に掛けてある時計に視線を移すと3時を過ぎていた――…
後、3時間もすればママが起きてくる。なのに、あたしの瞼は閉じようともしてくれなくて睡魔さえ襲ってくる気配すらなかった。
部屋に入って、とりあえずベッドに寝転んで目を瞑ってみたけど寝れなかった。
カーテンを閉めている窓から少しずつ明かりがでてきたのが分かる。
もう夜明け――…