その手に触れたくて
Γ実際、美月の兄ちゃんとは関わりねぇけど、その後輩…所謂俺らとタメの奴らと何度かやり合ってた」
Γ……」
Γ今は違うけど、顔にアザ作ってたのも喧嘩が原因。美月が嫌がってんのも分かってたし、美月が哀しそうな顔すっから俺は敢えて何も言わなかった。っつーか言えなかった」
Γ……」
Γ聞いたと思うけど俺さ…、美月が思ってるほどいい男じゃねぇよ。人からいっぱい恨み買われてるどうしようもねぇ奴なんだ…」
Γ……」
Γだから美月と別れよって思ってた…」
だんだん隼人の声が小さく擦れていくのがわかった。あたしの身体を抱き締めている隼人の手が時たま震えていた。
そんな隼人の背中にあたしは自分の腕を回してギュッと隼人を抱き締めた。
お互い抱き締め合う体温が一つになったみたいでポカポカする。
隼人はあたしの肩に顔を埋めたまま続けて言葉を吐き出した。
Γ考えて考えてしてた。でも1週間、美月と会ってねぇだけで耐えられなかった」
隼人は抱き締めていたあたしの身体を離す。それと同時に隼人を抱き締めていたあたしの腕が必然的に離れ、隼人はあたしの顎に手を添え、そっとキスを交わした。