その手に触れたくて

そっと触れ合うだけのキスを交わし、隼人はもう一度あたしを抱き締める。


Γ美月と…離れたくねぇ…」


隼人のポツンと呟いた言葉が身に染みる。あたしだって隼人と離れたくない。

隼人がどんな人であろうと、あたしは隼人が好きだから…


Γあたしだって離れたくないよ…」


そう呟いたあたしは隼人の腰に手を回す。だけど、


Γでも…」


と言う隼人の不安げな声であたしが抱き締める腕の強さが少しだけ緩んだ。


Γ…な、に?」


戸惑う様に問い掛けると、隼人はあたしの後頭部をそっと撫でる。撫でた手はもう一度、背中へと回り、隼人は自分の方へとあたしの身体を引き寄せた。


Γでも、その前に美月の兄ちゃんにちゃんと言わねぇと…」


“どうしようもねぇ”って感じでそう言った隼人に思わずあたしはバッと隼人の胸を押し、あたしの身体と引き離した。

そんなあたしを隼人は少し驚いた顔付きで見つめる。


Γま、待ってよ!何でお兄ちゃんに言う必要があるの!?」


そう問い掛けるあたしに隼人は面倒くさそうに軽く息を吐き、痛々しい顔を顰めた。


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