その手に触れたくて
Γつーかさ、もう点滴とかよくね?」
Γいやいや…まだ体力も回復してないでしょ?」
Γもー点滴とか面倒くせぇんだけど。すげぇ時間かかっし…腕だりぃし」
隼人は不機嫌そうにブツブツ文句を言いながら、左腕に針が入ったチューブを見つめる。
Γまだ後、3日間くらいはあるから頑張って下さい」
Γマジかよ…」
Γ…マジです。はい、出来ました」
看護師さんは薄ら笑いながら隼人にそう言ってあたしに視線を向けた。
Γ取らない様に随時、見張りをお願いしますね」
そう言った看護師さんにあたしは少し目を見開き、チラッと隼人に視線を移してからもう一度、看護師さんを見た。
Γえ?一度、取ったんですか?!」
驚いた声を出すあたしに、
Γはい。機嫌が悪かったのか3度くらい引っ張って取ってました」
看護師さんは苦笑いでそう言って隼人に視線を向けた。
Γ何してんの?…隼人…」
思わずあたしの口から声が漏れる。
Γ別に…」
Γ別にって…ダメじゃんそんな事したら」
Γねー…ダメだよね」
あたしの言葉に続けて看護師さんはクスクス笑いながら言う。
そんな看護師さんに、
Γはいはい。終わったらさっさと、出てった出てった」
看護師さんを見ながら隼人は手で追い払う。
Γはいはい。橘くん怒らせたら手が付けられないから出て行きます」
看護師さんはフフッと笑った後、あたしにお辞儀をし病院から出て行った。