その手に触れたくて

Γ何あれ…まるであたしが悪いみたいじゃん」


夏美は直司が出て行った方へ視線を向け、不機嫌そうにブツブツと呟く。


Γ夏美ごめん。あたしが悪いのに」

Γいや…そうじゃなくてね、あたしがナオを連れてきたのも留年しない為なんだって。なのにナオは全然分かってない!!」


頬を膨らませる夏美は眉間にシワを寄せる。その膨らませている頬に入った空気とともに夏美は深いため息を吐き出した。


Γ…留年?」


夏美の言葉につい引っ掛かったあたしは思わずそう声を出す。そんなあたしに夏美は視線を向けコクンと頷いた。


Γだってよく考えてみなよ。ナオ、遅刻ばっかだし全然来てないじゃん。来たとしてもさ屋上でサボッて授業でてないし、あれは絶対留年決定だよ」


留年…

そう言えば、そうかも知れない。教室に居る所をあまり見た事がないような…


あれ?…って事は…。何か嫌な予感がした。

背中に汗が走りだすような嫌な予感が…


Γもしかして…隼人もかな?」


思った通り呟くように声を吐き出すと、夏美は“あっ…”って顔をした。

隼人と付き合ってからはそれなりにあたしに気を使ってか、一緒に居るのが当たり前って感じでいたけど、それ以前の事は知らない。

付き合ってからも何日か来てない日だってあったし、一緒にサボッた日があった。今だって入院してる訳だし…


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