その手に触れたくて

Γえ、どこ行くの?」

Γネイル」


そう言った夏美は両手の甲をあたしに向け、爪を見せ、


Γほら、ここ。昨日したばかりなのに取れた」


一部、取れているデコレーションに視線を落とし夏美は頬を膨らませる。


Γあー…本当だね」

Γうん最悪…。美月もさ、今何もしてないんだったら気分転換にしなよ。美月の爪綺麗んだし、そのままデコっちゃえばいいじゃん。ね、一緒にしよ?」


自分の何もしてない爪を見て、あたしはコクンと頷いた。


Γうん…だね」

Γよし!!じゃあ決まりだね」

Γうん」



その日の授業はあっと言う間に終わり、最後の最後まで直司は学校には来なかった。

多分…きっと隼人の所に行ってるんだなって思ったりもした。


夏美はあたしを気遣ってんのか知んないけど隼人の名前は一切出さなかった。


だからあたしも夏美に隼人の事は何も言わなかった。


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