その手に触れたくて
起き上がったあたしは、キリっと痛みだす頭を左右に振り目を覚ます。
床に無造作に置かれている携帯に手を延ばし開けた。
画面に映し出される時刻は6時半。
冬の所為か外はまだ薄暗くて、部屋に居ても寒さを感じる。
凛さんの事を思うと、申し訳ない気持ちとともに思わずため息が漏れてしまった。
腕を軽く擦り、あたしは携帯を手に部屋をでる。
「あ、美月ちゃん」
階段を降りて前方から聞こえてきた声にあたしは視線を前に向ける。
そこに居たのは凛さんで、朝風呂にでも入ったのか濡れた髪を拭きながら笑みを漏らした。
「あ…。なんかすみませんでした」
ペコっと頭を下げる。
「全然いいよ。ってかもう帰るの?」
「はい」
「大丈夫?寝れた?」
「はい。すみません。凛さんに迷惑ばかり掛けてしまって」
「つか、美月ちゃんに迷惑掛けてもらった記憶もないけどね」
そう言った凛さんは薄ら笑った。
「すみません。じゃ、帰ります」
凛さんに軽く頭を下げて玄関に揃えてある靴につま先を入れる。
「また何かあったら言ってね」
履き終えたあたしは少しだけ口角を上げ手を振る凛さんにお辞儀をし、あたしは外に出た。
ヒヤっとする風があまりにも冷たくて顔の肌が少し痛む。
吐く息は白く薄暗い外に何故か気味悪さを感じた。