その手に触れたくて
「悪い」
そう呟く隼人の身体は微かに震えてて、
「大丈夫?」
あたしは隼人の額にそっと触れた。
「熱っ…」
思わず漏れてしまった声。
グッタリする隼人の身体を支え、あたしは家のドアをバタンと閉めた。
「とりあえず部屋行こ?」
「あぁ」
あたしの声に隼人は軽く頷き、苦しそうに咳き込む。
隼人を支えながら部屋まで行き、あたしはベッドに隼人を寝かせた。
見渡す部屋は散乱と言うんだろうか、脱ぎ捨てた服があちらこちらに散らばっていてテーブルの上にはポカリのペットボトルとグラスと薬。
「隼人?」
辺りを見渡しながらそう呟き、ベッドに寝転んでいる隼人の真ん前に腰を下ろす。
「うん?」
「いつから?」
「…ん?」
「いつから風邪引いてたの?」
「さぁ…」
「さぁって…。病院行った?」
「行ってねぇ…」
「行かなきゃヤバいんじゃないの?熱は?」
「さぁ…」
額に腕を乗せている隼人は目を瞑ったまま。
もう気力さえない隼人は苦しそうに何度か咳き込んでた。
その辛そうな隼人を見てから、あたしはふとテーブルを見た時に見つけた体温計を手に取る。
いつ測ったのかも分からない体温計はケースに入ってなくて、小さい窓には38.9と示されている。