その手に触れたくて
Γなんで?熱かなり高いよ?」
Γ寝てりゃ治んだろ」
Γ治んないよ。ねぇ、誰も居ないの?隼人のお母さんは?」
Γいねぇよ…。泊まりでどっか行ってる」
「じゃあ、ちょっと待ってて」
そう言ってすぐあたしは部屋から出てふろ場に向かいオケとタオルを手に持った。
勝手にするのは何だか申し訳なく思う。何度か来たから何処に何があるのかだいたい分かってたけど、やっぱし勝手にするのは気が引ける。
だけど、でも今はそんな事を思ってる場合じゃない。
病院に行かないと行った隼人を何とかしなければならない。
タオルとオケを持ったままリビングへ向かったあたしは冷蔵庫の前に立つ。
「すみません…」
ひと呟きをしたあたしは冷凍庫から氷を大量にオケに詰め込んで水を張った。
その中にタオルを入れてあたしは隼人の部屋へと入る。
今でも何度か咳き込んでいる隼人が心配で心配でたまらなく、あたしは氷水に浸けていたタオルをギュっと絞り隼人の額に乗せた。
と、同時に隼人は閉じていた目をゆっくり開けほんの少しだけ口角を上げる。
「ごめんな、美月。…悪いな」
そう言った隼人に素早く首を振ると隼人は少しだけ微笑んであたしの頭に手を乗せてポンポンと軽く触れるとあたしの手まで腕を滑り落とした。
「隼人、寝てていいよ。あたし居るから」
「あぁ」
隼人は深いため息を吐き捨てまた深く目を閉じた。