その手に触れたくて
どれくらいの時間が過ぎたかなんて分かんなかった。
ただ窓からの明かりが全て暗闇に包まれてた。
隼人の傍に居て額に乗せていたタオルを何度か変えた後、あたしは鞄の中から財布を取り出し部屋を出た。
とりあえず何か買って来なくちゃ。
外に出ると辺りは真っ暗で、その暗さに身を縮めながら足を進めた時、前方から来た原付のライトであたしは顔を顰めた。
その原付はあたしの前でピタっと止まり、
「あれ?美月ちゃん?」
誰かに呼ばれる声であたしの足は完全に止まった。
落としていた視線をあげて原付に跨っている直司が不思議そうにあたしを見てた。
「あ…」
「美月ちゃん居たんだ」
「うん。連絡なくて気になってたから…」
「あー…隼人死にかけだって?」
「え?」
「いや、俺も知んなかったからさ。で、死にそうって電話あったから」
「電話?」
あたしにはないのに…?
「うん、そう。んで、適当なもん買って来たんだけどさ」
そう言って手に持っていたスーパーの袋をあたしに差し出す。
「あ、うん」
差し出された袋をあたしは受け取り中を覗き込む。
その中には水にポカリに冷えピタ、お粥が2袋入ってた。